英語のリスニングや速読力を高める勉強法として注目されているのが「シャドーイング」です。
大学受験を控えた学生の中には名前だけ知っている人も多いですが、「やり方がわからない」「本当に効果があるのか」「意味ないのでは?」と疑問を持つ初心者も少なくありません。
しかし、正しいステップで取り組めばリスニングだけでなく、スピーキングや読解力にも直結する効率的な学習法です。
この記事では、初心者でも安心して取り組めるシャドーイング勉強法について、効果・やり方・注意点をわかりやすく解説します。
英語の学習方法「シャドーイング」とは?
まずは、英語の「シャドーイング」とはなにか、概要を解説します。
シャドーイングとはどのような勉強法なのか、そしてどのような効果があるのかについて、順番に見ていきましょう。
シャドーイングは復唱する勉強方法
シャドーイング(Shadowing)とは、英語の音声を聞きながら、それを即座に追いかけるように復唱する勉強法です。
「シャドー(Shadow)」という言葉の通り、影が後ろをくっついてくるようなイメージで、音声を聞こえた通りに読み上げます。
元々はプロの同時通訳者の訓練法として用いられていたという背景がありますが、この勉強法は英語力向上への効果が非常に大きいことから、次第に受験英語や英語資格の学習にも用いられるようになりました。
英語教育に関する学術研究でも注目されており、その効果は学術的にも認められています。
シャドーイングの効果
シャドーイングは、リスニングやスピーキング、そして速読に大きな効果があります。
英語音声を注意深く聞きそれをそのまま口に出すことで、正しい発音や英語のリズムを耳でも口の両方で習得できます。
さらに、シャドーイングの速度でも内容を理解できるように練習を繰り返すことで、リーディングの速度向上にもつながります。
また、単語や熟語を文章ベースで覚えられるため、語彙力アップにも繋がります。
大学受験の英語においては、共通テストをはじめ、リスニングや速読のスキルを求められる場面も多いです。
これらを効率的に伸ばす方法として、シャドーイングはぴったりな勉強法だと言えるでしょう。
シャドーイングの具体的なやり方
それでは、具体的にシャドーイングはどのような方法で進めればよいのでしょうか。
単に英文を復唱してみるだけでは、期待するような効果は得られません。
正しいやり方は、大まかに以下の5ステップに分けられます。
- ①音声をフルで聞く
- ②テキストを見ずにシャドーイングする
- ③テキストを見ながらシャドーイングする
- ④テキスト上の単語や文章の意味を理解する
- ⑤テキストを見ずにシャドーイングする
これらのプロセスを行うことによって、シャドーイングの真の効果が発揮されます。
各ステップについて、どんな意味があるのか、どのようなことに注意すれば良いのかについて見ていきましょう。
①音声をフルで聞く
まずは、英語音声をフルで聞いてみます。
ここでは、英語音声の内容や話し方などを大まかにつかむことを心がけましょう。
補足:学習教材として選ぶ音声について
受験に向けて選ぶシャドーイング教材としては、リスニング用の過去問や予想問題がおすすめです。
しかし、受験レベルのリスニング問題は速度が早かったり、内容が難解なこともありますので、市販の教材や教科書付属のCD等を併用するのも有効です。
自分が理解できるよりも少し難しいスピード・内容の教材を選ぶことで、効果的にステップアップできます。
②テキストを見ずにシャドーイングする
次に、テキストを見ないまま、つぶやくようにシャドーイングします。
これは「マンブリング(mumbling)」と呼ばれる方法です。
自分の発音よりも、聞こえてくる音声のリズムやイントネーションに集中しましょう。
慣れてきたら、スピードや発音の再現度を少しずつ高めていき、次のステップに進みます。
③テキストを見ながらシャドーイングする
テキストを見ながら、音声とほぼ同時にしっかり声を出して音読します。
この方法は「シンクロ・リーディング」あるいは「オーバーラッピング」とも呼ばれます。
発音を一致させたり、音声と同じスピードで英文を読む感覚を習得するために行います。
④テキスト上の単語や文章の意味を理解する
音声とシャドーイングを行ったら、テキストの意味を確認します。
文章の日本語訳を読んだり、わからなかった単語の意味を調べたりしましょう。
英単語の意味を理解するよりも先にリスニングとシャドーイングを行うことで、新しい語彙を正しい音声で先にインプットすることができます。
たとえば、「ウォーター=水」だと覚えてしまった後に「ワーラー(wˈɔːṭɚ)」という音を聞いても、なんのことか分かりません。リスニングでは、正しい音声とそのスペル、そしてその意味を全て一致させることが重要です。
補足:先に意味を調べるのはダメ?
既に精読したことのある文章であれば、先に意味を確認してもシャドーイングは行いやすくなります。その場合はこの④のステップを省いても問題ありません。ただし、英語の音を日本語的な理解に引っ張られないようにすることが重要です。
たとえば、耳にはっきりと「ワーラー」と聞こえたのに、「これはwater(水)だ」と思い込んでしまうと、無意識に「ウォーター」と日本語的な発音で言ってしまう傾向があります。
シャドーイングの本質は「意味を考えるよりも、聞こえてきた音をそのまま再現する」ことですから、あくまで耳に入った通りの音を優先して声に出すことが大切なのです。
⑤テキストを見ずにシャドーイングする
最後に、もう一度、テキストを見ずにシャドーイングします。
これまでに注意を向けてきた、強弱、リズム、イントネーション、そして全体の意味などを再度意識しながら、音声を繰り返します。
シャドーイングは意味ない?効果的なやり方とは?
ここまでシャドーイングのやり方を解説してきましたが、なんとなく取り組んでも効果を実感できず、「あんまり意味がないな」と感じてやめてしまう人も少なくありません。
たしかに、シャドーイングは1回ですぐに効果が出るような勉強法ではなく、正しい順序と注意点を守らなければ、効果は得られません。
しかし逆にいえば、それらをしっかり守れば、誰でも確実に成果を実感できる非常に再現性の高い勉強法です。
せっかくのシャドーイングが「意味のない勉強法」になってしまわないように、改めて注意すべきポイントを確認していきましょう。
聞くことに集中する
最初のリスニングとその次のマンブリングでは、音声を聞くことに注力しましょう。特に、マンブリングでは「単語が聞き取れなかったからわからない!」などと考えず、聞こえた音をそのまま声に出してみましょう。
内容理解よりも、どのように聞こえるかを意識してアウトプットすることが大切です。
継続的に行う
繰り返しになりますが、シャドーイングは1回やっただけですぐに効果が出るような勉強法ではありません。
しかし、1日5分でも継続的に続けることで、確実に英語力が上がるのを実感できます。
1つの文章を使ったシャドーイングで、リスニングだけでなく、スピーキングやリーディングの対策もすることができます。
そのため、長期的に見ると効果的な勉強法と言えるでしょう。
英語のシャドーイングのやり方|まとめ
本記事では、英語学習法の一つであるシャドーイングと、その効果や具体的なやり方を解説しました。
シャドーイングとは、聞こえた英語の音声を追いかけて復唱する学習法で、リスニング力だけでなくスピーキング力や速読にも効果があります。
具体的な方法としては、まずリスニングから始め、マンブリング、オーバーラッピング、そしてスクリプトなしでのシャドーイングへと進めていく流れが基本です。
その際に重要なのは、音声をしっかり聞くことに集中し、短時間でも継続して取り組むことです。
受験に向けてリスニングや速読のスキルをブラッシュアップしたい学生さんは、ぜひシャドーイングを毎日の勉強に取り入れてみてはいかがでしょうか。