電気分解を試験や受験のために勉強しようと思っている方で、
「化学の電気分解を勉強しようと思っても中学の内容からわからない」
「陽極?陰極?用語からわからない」
「水酸化ナトリウムの電気分解ってなに?」
と思っている方もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事ではまず中学理科の復習として、電気分解と陰極・陽極の用語の確認を行いました。
また、記事の後半では、陽極と陰極の反応に分けて電気分解の仕組みや、水酸化ナトリウムの電気分解について解説しています。
【中学理科・復習】電気分解に関する用語を確認しよう!
それではまず中学理科の復習として、
- 電気分解
- 陽極
- 陰極
の3つの用語について確認を行います。
これらは定義だけでなく、使い方なども意識して覚えるようにしてください。
用語確認|電気分解
まずはじめに確認するのは、電気分解です。
電気分解の定義については、例えば以下のように定められています。
電気分解とは、分解したい対象物質を溶解させた溶液に電圧をかけて電流を流すことで、化合物に対して正極側で酸化反応、負極側で還元反応を引き起こし、それによって電気化学的に分解する方法です。
装置は主に電極、電源、電解槽の3つで構成されています。
電極の正極、負極の決定は標準酸化還元電位により、値が大きいほうが負極となり、電解槽で反応するイオンも決定されます。
同様の原理を用いて合成を行う等といった応用もなされています。
上記の定義を簡単に説明すると、電気分解とは「分解したい対象物質を溶解させた溶液に電気を流すことで起こる化学反応」のことです。
用語確認|陽極・陰極
次に陽極と陰極について確認しましょう!
陽極とは直流電源の正極(プラス)に接続した電極のことで、電子が奪われる酸化反応を起こします。
また、陰極とは直流電源の負極(マイナス)に接続した電極のことで、電子が与えられる還元反応が起こります。
電気分解の仕組み
それでは電気分解とはどのような仕組みで行われているのか、陽極の反応と陰極の反応に分けて解説していきます。
電子の移動・反応式などに注意しながら理解してください。
電気分解の仕組み|陽極の反応
陽極では電子が奪われる酸化反応が起こりますが、実際にどのような反応が起きるかは以下の2点に注意しながら考えていきましょう!
②電解液に溶けているものを確認する
まず①を確認し、その次に必要であれば②を確認するという順番も覚えるようにしてください。
陽極の反応|①電極を確認する
はじめに、電極がAu(金) ・Pt(白金)・C(炭素)であるかどうかを確認します。
もし、この3つのいずれかに当てはまる場合は②を確認するようにしましょう。
一方で、電極がAu(金) ・Pt(白金)・C(炭素)でない場合は、電極自身が酸化されイオンになる反応が陽極では起こります。
例えば、電極がCu(銅)や銀(Ag)だった場合には以下のような反応が生じます。
Ag→Ag++e–
この場合には、この方程式が陽極で起こる反応になります。
陽極の反応|②電解液に溶けているものを確認する
電極がAu(金) ・Pt(白金)・C(炭素)だった場合、電解液にハロゲン化物イオンが溶けているかを確認しましょう!
ハロゲン化物イオンとは、周期表で第17族に属する元素であるF・Cl・Br・Iなどのことで以下のような反応が生じます。
一方、ハロゲン化物イオンが含まれていなかった場合には、水溶液に含まれる水H₂Oが反応し、以下のような反応式で表されます。
- 水溶液が中性または酸性の場合
- 水溶液が塩基性の場合
2H2O→ O2+4OH–+ 4e–
4OH–→ O2+ 2H2O+ 4e–
以上が、陽極で起こる反応になります。
電気分解の仕組み|陰極の反応
陰極では電子が与えられる還元反応が起こり、陽極とは異なり電極の有無により反応の違いはないです。
陰極の反応を考える際には、電解液中に水素イオン(H⁺)よりもイオン化傾向が小さい金属イオンの有無を確認しましょう!
イオン化傾向とは、以下のイオン化列の順番通りにイオン化傾向と呼ばれる陽イオンになりやすい傾向が高くなっていることを表しています。
以下では、電解液中に水素イオン(H⁺)よりもイオン化傾向が小さい金属イオンがある場合とない場合に分けて解説していきます。
陰極の反応|①水素イオンよりもイオン化傾向が小さい金属イオンがある
電解液中に水素イオンよりもイオン化傾向が小さい金属イオン(Cu・Hg・Ag・Pt・Au)が存在する場合、イオン化傾向が小さい金属イオンが反応します。
例えば以下のような反応が起こります。
Cu2++2e–→Cu
Ag++e–→Ag
これがそのまま陰極の反応となります。
陰極の反応|②水素イオンよりもイオン化傾向が小さい金属イオンがない
一方、水素イオンよりもイオン化傾向が小さい金属イオンがない場合には水H₂Oが反応します。
反応式は、水溶液の液性別ごとに以下の通りです。
- 水溶液が中性や塩基性の場合
- 水溶液が酸性の場合
2H2O+2e–→H2+2OH–
2H++2e–→H2
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解
これまで電気分解の仕組みについて解説しましたが、具体的にどのような反応が起こるのか知りたい方も多いのではないでしょうか?
そこでここでは、前述した電気分解の仕組みに沿って、受験でよく出題される電極にPtを用いた水酸化ナトリウム水溶液の水の電気分解について陽極の反応・陰極の反応・全体の反応に分けて解説していきます。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解|陽極の反応
陽極での反応を考える際には、
①電極を確認する
②電解液に溶けているものを確認する
の2点を考えていくことを前述しました。
今回は電極がPt(白金)のため②のステップに進み、電解液にハロゲン化物イオンがないことから、H₂Oが分解されます。
また、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液はOHが含まれていることからも分かる通り塩基性のため、陽極で起こる反応を反応式で表すと以下のようになります。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解|陰極の反応
陰極の反応を考える際には、電解液中に水素イオン(H⁺)よりもイオン化傾向が小さい金属イオンの有無を確認することが重要でした。
今回NaOH水溶液には、Cu・Hg・Ag・Pt・Auといったイオン化傾向が小さい金属イオンは存在しないため、H2Oが反応します。
また、水溶液は塩基性のため陰極の反応式は以下の通りです。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解|全体の反応
陽極の反応と陰極の反応を電子の数が揃うように、陰極の反応式を2倍にして反応式全体を足すと、全体の反応式を理解することができます。
よって、以下のようになります。
陽極の反応式:4OH–→ O2+ 2H2O+ 4e–
陰極の反応式:(2H2O+2e–→H2+2OH–)×2
水酸化ナトリウム水溶液の全体の反応式:2H2O → 2H2+O2
水酸化ナトリウムは反応せず水のみが反応するため、
・水酸化ナトリウム水溶液としての濃度は上がっていくこと
・電気分解で発生する気体の体積の比率は、酸素:水素=1:2となる
ことがポイントであり入試でよく出題されるため、しっかり理解し導けるようにしましょう!
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解とは?用語や陽極と陰極の反応も|まとめ
この記事では、
・電気分解と陰極や陽極の用語の確認
・電気分解の仕組み
・水酸化ナトリウムの電気分解
について解説しました。
電気分解を考える際に、重要なポイントを再確認します。
【電気分解の仕組み|陽極の反応】
①電極を確認する
②電解液に溶けているものを確認する
【電気分解の仕組み|陰極の反応】
電解液中に水素イオン(H⁺)よりもイオン化傾向が小さい金属イオンの有無を確認する
電気分解という用語だけで勉強アレルギーを発生させてしまう方もいますが、1つ1つ順を追って理解することで、反応を理解することができます。
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